はじめに
デザイン初心者にとって「バナー作成」は最初にぶつかる壁のひとつです。SNS広告やWebサイトの告知に使われるバナーは、目立たなければ意味がありませんし、かといってセンスだけで乗り切れるものでもありません。
ところが、ほとんどの初心者が最初に陥る罠があります。それは「情報を盛り込みすぎる」ことです。言い換えれば、ダサいバナーのほとんどは“情報過多”が原因です。
この記事では、なぜ「情報の盛り込みすぎ」がダサさを生むのか、そしてどうすればプロのようにスッキリとしたバナーが作れるのかを、具体的に解説していきます。
第1章:「バナーがダサい」の正体は“情報過多”
初心者の多くが、「せっかく作るなら全部伝えたい」という気持ちから、以下のような行動を取ります。
- キャッチコピーを長く書きすぎる
- 画像・イラスト・アイコンを全部入れようとする
- 色やフォントをたくさん使って目立たせようとする
- 情報が入りきらないので文字を小さく詰め込む
結果として「ごちゃごちゃしたバナー」が完成してしまうんですね。
これは、いわゆる“伝えたい病”とも言えます。商品やサービスに愛着があるからこそ、「これも伝えたい!」「あれも入れたい!」とどんどん要素を追加してしまうのです。
第2章:人は“全部読まない”という大前提
デザインの基本に戻ると、人間はバナーの文字を全部は読まないという前提を忘れてはいけません。
広告心理学や行動科学の研究でも、人の視線は 数秒以内に「見るか・スルーするか」を決めるとされています。特にSNSのタイムラインでは、スクロールしながら「一瞬の印象」で判断されてしまいます。
つまり、バナーに詰め込んだ細かい情報はほぼ読まれません。残るのは「パッと見たときの印象」だけです。
それなのに、情報をたくさん入れすぎると、逆に「何を伝えたいのかわからない」状態になり、読まれないどころか無視されてしまうのです。
第3章:プロのバナーは“削ぎ落とす”設計
プロのデザイナーがバナーを作るときに意識しているのは「何を伝えないか」を決めることです。
プロが意識するポイント
- 1枚のバナーにつき「伝えるメッセージは1つ」
- 装飾や要素は“伝えたい内容を補強するものだけ”を残す
- 色はメイン+サブ+アクセントの3色まで
- フォントは最大2種類に制限
要するに、情報を盛るのではなく、選び抜くことが大切なんです。
初心者が「どうしたらオシャレに見えるんだろう?」と悩むのに対して、プロは「不要な情報をどう削るか?」を考えています。この発想の違いが、完成度の差につながります。
第4章:情報整理は“引き算”から始める
では、どうすれば「情報過多」を避けられるのか。答えはシンプルで、まず削ることから始めることです。
ステップ1:メインメッセージを1つ決める
「このバナーで一番伝えたいことは何か?」を決めます。
例:
- 新商品の発売開始
- 期間限定セール
- イベント開催のお知らせ
それ以外の情報は「伝えなくてもいい」と割り切る勇気が必要です。
ステップ2:補足情報を最小限に
メインメッセージを支える情報(価格、日付、場所など)だけを残します。その他の詳細情報はランディングページや詳細記事に任せれば十分です。
ステップ3:視覚的に整理する
要素を残すと決めたら、今度は「どの順番で視線に入れるか」を考えます。デザインの4原則(近接・整列・反復・対比)を使い、視線誘導が自然になるように配置していきます。
第5章:よくあるNGパターンと修正例
ここで、初心者がやりがちな「盛りすぎバナー」を例にして考えてみましょう。
NG例
- キャッチコピーが3行以上
- 背景にイラスト+写真+パターンを全部重ねる
- 文字のフォントが4種類以上
- 「お問い合わせはこちら」「今すぐチェック」「詳細はWebで」などCTAが複数
これでは、見る人は「どこを見ればいいのかわからない」と混乱します。
修正版
- キャッチコピーは短く1行
- 背景は写真1枚だけに絞る
- フォントは見出し用+本文用の2種類まで
- CTAは1つに絞り、目立つ場所に配置
こうすることで、情報量は半分以下になりますが、むしろ伝わりやすさは倍増します。
第6章:色とフォントも“削ぎ落とし”が基本
デザインを「派手にしたい」と思うと、多くの人は色を増やし、フォントを増やしてしまいます。ですが、これは逆効果です。
- 色はメイン1色+サブ1色+アクセント1色の「3色ルール」
- フォントは「見出し用」と「本文用」の2種類まで
このシンプルなルールを守るだけで、バナーは一気に洗練されます。
プロのデザインがオシャレに見えるのは、奇抜だからではなく、制約の中で一貫性を守っているからなんです。
第7章:実際の制作プロセス
僕自身がバナーを作るとき、必ず踏んでいる流れを紹介します。
- 目的の確認
─「何を伝えたいのか?」「誰に伝えたいのか?」をクライアントとすり合わせる。 - 情報の仕分け
─メインメッセージ、補足、不要に分ける。不要は思い切って削除。 - ラフスケッチ
─いきなりPCに向かわず、まずは紙やiPadにざっくり構成を描く。 - デザイン制作
─レイアウト、配色、フォントをルールに沿って配置。 - チェックと修正
─「1秒で伝わるか?」を基準に第三者に見せて反応を確認。
この5ステップを繰り返すだけで、初心者でも「情報を整理できたバナー」が作れるようになります。
第8章:初心者向けチェックリスト
最後に、制作後に確認すべきチェックリストをまとめます。
- メインメッセージは1つに絞れているか
- 補足情報は最小限になっているか
- 要素が整列し、視線誘導が自然になっているか
- フォントは2種類までに抑えられているか
- 色は3色ルール内で使えているか
- CTA(行動を促す部分)は1つに絞られているか
このチェックを通れば、ダサくて伝わらないバナーにはなりません。
まとめ
「バナーがダサくなる」一番の原因は、**“情報を盛りすぎること”**です。デザインは足し算ではなく、引き算。削る勇気こそが、伝わるデザインの第一歩だと思います。
プロのデザイナーは「何を伝えないか」を決めるのがうまい。逆に言えば、それができるかどうかが初心者とプロの境界線です。
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