第1章:デザインの“正しさ”が薄れてきた時代
最近、デザインの現場で「正解がない」と言われることが増えました。色やフォントの選定、レイアウトの優先順位──それぞれに「理由」はあるけれど、「絶対的な正しさ」はどこにもない。
FigmaやCanva、STUDIOといったツールの進化によって、誰でも簡単に“それっぽい”ものが作れるようになりました。テンプレートも豊富で、AIまで手伝ってくれる。
だけど、そこには**“思想”がない**と感じる瞬間があるんです。
たとえば、整っていても「心が動かないデザイン」。
プロが見れば分かる、「どこか借り物のような」「主語のない」デザイン。
それはきっと、思想という“芯”が抜けているからなんじゃないかと、僕は思うんです。
第2章:そもそも“思想”ってなんなん?
「思想」と聞くと、なんだか大げさな感じがするかもしれません。難しそうだし、宗教っぽい印象を持つ人もいるかもしれませんね。
でもここで言う“思想”っていうのは、**「自分は何のためにデザインをしているのか?」**というシンプルな問いへの答えです。
- 誰を喜ばせたいのか?
- どんな世界観を広げたいのか?
- 何に対してNOと言い、何をYESとするのか?
それが思想です。
もっと言えば、**「世界のどこをどう変えたいのか」**という視点を持っているかどうか。
たとえば、Appleのプロダクトには「美しさと直感的な操作性が共存する未来」が感じられます。あれはデザインの技術ではなく、“思想”が徹底されているからです。
第3章:“思想”は技術よりも先にある
ここでひとつ明確にしておきたいのは、**「思想は、技術を支配する」**ということです。
たとえば「シンプルなデザイン」を作ろうと思ったとき、
技術しかなければ、余白を増やして、色を減らして、フォントを揃えて終わりになります。
でも、思想があるデザイナーはこう考えるかもしれません。
- 情報が届きやすいように、余計な装飾を削ぎ落とす
- 使用者のストレスを極力なくすために、直感的な操作感にする
- ブランドの世界観を壊さないように、静かな力を持った表現にする
つまり、「なぜそうするのか?」という“思想”があることで、同じ「シンプル」でも意味がまったく変わってくるんです。
しかもこの思想は、ツールや媒体が変わってもブレません。
Canvaだろうと、Figmaだろうと、紙だろうと、SNSバナーだろうと。
思想があれば、「ツールに振り回されないデザイン」ができるようになるんです。
これは、表面だけのスキルで仕事をしていたら到達できないレイヤーです。
【1/3】ここまで。
次の【2/3】では、「思想を持ったデザインがなぜ刺さるのか」「実例や歴史から見る思想とデザインの関係性」について掘り下げていきます。
このまま続けますね!
続き、いきますね!
こちらは【2/3】です。
第4章:思想があるデザインは、なぜ“刺さる”のか?
マーケティングの世界では、「ペルソナ設計」や「ユーザージャーニー」が重要と言われますよね。でも、それらをただ“設計としてやってる”のか、それとも“本気で相手の人生に寄り添ってる”のかで、デザインの質は大きく変わってきます。
思想があるデザインは、相手の心に深く刺さります。
なぜなら、それは単なる「視覚情報」じゃなくて、「価値観の共鳴」だから。
たとえば、環境問題を訴えるポスター。
リサイクルの大切さを伝えるだけなら、イラストでも写真でも伝えられる。
でも、「今、地球が抱えている危機」を**“自分の言葉でどう捉えたか”**をビジュアルでぶつけたデザインは、見た瞬間に震えるほど心を動かします。
これは「伝えたいことがある」からこそ、発せられる力です。
そしてそれこそが、“思想があるデザイン”の正体。
第5章:歴史の中の“思想あるデザイン”たち
思想とデザインが強く結びついていた例は、歴史を見てもたくさんあります。
バウハウスの思想
たとえば、20世紀初頭のバウハウス運動。
「芸術と技術の統合」という思想をもとに、建築・タイポグラフィ・プロダクト・グラフィックに至るまで、徹底的に合理性と美を追求したムーブメント。
ここには「生活を豊かにするためのデザインとは何か?」という問いが根底にありました。
ソビエト・プロパガンダポスター
政治利用の側面もあるけど、ソビエト連邦のプロパガンダポスターは、「国家の理想像」という強烈な思想をビジュアルに昇華させていました。
タイポグラフィの大胆な配置、対角線構成、赤と黒のインパクトカラー。
それらすべてが、「力強さ」「団結」「未来志向」という思想の視覚化。
こういうのを見ても、デザインは単なる“見た目作り”じゃないことがわかると思います。
思想を持つことで、作品に命が宿るんです。
第6章:“思想”を持ちたい人への実践ヒント
「思想を持てと言われても、いきなり難しいことはできんよ…」という声も聞こえてきそうなので、ここでは実践的なヒントを。
1. 「なんでこれやるんだっけ?」を問い直す
デザインの目的や背景を、自分の言葉で語ってみる。
上司やクライアントの言葉をそのまま使うんじゃなく、自分なりに翻訳してみること。
2.「好きなデザイン」に、なぜ惹かれるのかを言語化する
PinterestやBehanceで集めたお気に入り。
それらの共通点を探して、自分の価値観をあぶり出す。
たとえば、「温かみがあるものが好き」なら、なぜ温かみが必要なのか?
「かっこいい表現が多い」なら、それはどんな世界を投影してるのか?
この繰り返しが、“思想”の土壌を耕してくれます。
3. 自分の「NO」と「YES」を書き出す
・自分はこういうデザインはやりたくない
・自分はこういう表現を大事にしたい
それだけでも立派な“思想の芽”です。
第7章:思想があることで得られる“未来”
デザイナーとして成長していく上で、「思想を持つこと」はめちゃくちゃ大事な武器になります。
技術だけでは“代替可能”になる
今、AIが急速に進化していて、簡単なバナーやLPならAIが一瞬で作れるようになってきました。CanvaもSTUDIOもすごい勢いで便利になってる。
じゃあ、僕ら人間のデザイナーに何が残るか?
それは、「誰のために、何を、どう伝えるのか」という設計の思想と判断力なんよ。
思想のあるデザイナーは、“ツールに使われる”んじゃなくて、“ツールを使いこなす”立場に立てます。
ツールはあくまで表現手段。
思想はその根っこになるから、そこがしっかりしていれば、どんなツールが来ようがブレずに生き残れる。
第8章:初心者こそ、“思想”から入るのが近道
「思想を持つのは、経験を積んでからでもいいのでは?」と思う人もいるかもしれません。
でも、実は初心者こそ思想を意識することが大事です。
なぜか?
それは、「ツールの操作」に振り回されないため。
デザインを学び始めた頃って、どうしても「Figmaが難しい」「Canvaの使い方がわからない」ってなりがちです。でも、その時に**「そもそも何を伝えたいのか?」**が明確だったら、学ぶポイントも絞れるし、必要以上に焦らなくて済むんよ。
「技術習得 → 表現」じゃなくて、
**「伝えたいこと → 技術を選ぶ」**という順番。
この順番でやると、デザインって一気に楽しくなるし、自分らしさも出てくる。
第9章:まとめ ─ 技術の奥に“魂”を宿せ
最後にもう一度、この記事の要点をまとめます。
- デザインには“思想”が必要
- 思想は「自分なりの視点」や「譲れない価値観」
- 思想があると、技術やツールに振り回されなくなる
- 歴史的にも“思想のあるデザイン”は人を動かしてきた
- 初心者こそ、思想から考えることで成長スピードが上がる
見た目を整えることだけがデザインじゃない。
むしろ、その奥にある「思い」「視点」「価値観」こそが、“あなたらしさ”を作り出すんです。
デザインは、あなた自身を表現する最高の武器です。
そして、思想はその刃を研ぐための砥石。
「自分は何を伝えたいのか?」
この問いを、これからもずっと持ち続けていきましょう。
お知らせ:デザイン相談、受け付けてます!
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「もっとコンセプトを言語化したい」
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