はじめに:アートとデザインの違いとは?
僕はこれまで長年デザイナーとして活動してきましたが、よく聞かれる質問があります。
「アートとデザインって何が違うんですか?」
シンプルですが、実は奥が深いこの問い。多くの方が混同しがちな「表現したい」と「伝えたい」の違いに、デザインとアートの根本的な分かれ道があると思っています。
この違いを理解することで、デザインがうまくいかなかったり、自分の作ったものが伝わらない理由が見えてくるはず。
今回は、そのアートとデザインの明確な違いについて解説していきます。
第1章:「表現したい」とは?─ アートの視点
アートの本質は「自己表現」です。自分の内面や感情、哲学を形にして表現することが最大の目的となります。
例えば、画家がキャンバスに絵を描くとき、自分の感じたままを自由に描きますよね。
- 自分の内的世界を表現する
- 感情をありのままに伝える
- 誰かに共感されることは目的ではない
これが「表現したい」というアートの姿勢です。
広島弁でいうと、「自分が好きなようにやったらええやん」って感じでしょうか(笑)。
つまり、アートはあくまで「作者中心」であり、自由で主観的なのが特徴です。
第2章:「伝えたい」とは?─ デザインの視点
一方、デザインは「伝達」です。誰か特定の対象に向けて、具体的なメッセージを効果的に伝えるために行います。
例えば、商品パッケージのデザインでは、商品の魅力や特徴が伝わるようにしますよね。
- 明確な目的やターゲットが存在する
- 情報を整理し、分かりやすく提示する
- 見る人が理解しやすいように工夫する
これが「伝えたい」というデザインの視点です。
つまり、デザインは「受け手中心」であり、目的が明確で客観的なのが特徴です。
アートが自分主体なら、デザインは相手主体なんです。
第3章:具体的な違いを事例で確認しよう
では、具体例を使って、アートとデザインの違いをはっきりさせましょう。
事例1:ポスター制作の場合
- アート的アプローチ:自分の世界観や感情を自由に描く
- デザイン的アプローチ:見る人に特定のメッセージ(イベント告知、商品のPR)を伝えることを最優先
事例2:Webサイトの場合
- アート的アプローチ:クリエイターの個性を全面に出し、独特な表現を楽しむ
- デザイン的アプローチ:ユーザーが目的を達成しやすいように情報や動線を整える
これを見ると、アートとデザインでは明確に目的とアプローチが異なることが分かりますね。
第4章:デザイナーが陥りがちな「表現と伝達の混同」
実はデザイナーにとって、最も注意すべき落とし穴が「表現したい欲求」と「伝えたい目的」を混同することです。
デザインに自己表現を持ち込みすぎると、
- メッセージが伝わりにくくなる
- ターゲットが混乱する
- 最終的な目的が達成されない
という問題が起きてしまいます。
例えば、クライアントが求めているのは「売れるデザイン」なのに、自分のこだわりばかりを追求してしまう。これがよくある失敗例です。
重要なのは、「デザインの目的を見失わないこと」。常に見る人・使う人を想定して、伝えるべきことにフォーカスしましょう。
第5章:「伝える力」を育てるには
アートとデザインを明確に分けて考えることは、実務でも大きな武器になります。とはいえ、デザイナーとしては表現欲求も消せないもの。
そのバランスを取るためには、以下の3つの視点を持つことが有効です。
①目的を言語化する習慣をつける
まず「このデザインは誰に、何を、どう伝えるのか?」を言語化すること。これだけで迷いが減ります。
②受け手の視点で考える
「このデザイン、伝わる?」を自問自答する。可能なら第三者に見せてフィードバックをもらう。
③表現は“意図”とセットにする
表現したいことがあるなら、それをどう“伝わる形”に変換するかを考える癖をつける。
これらを意識することで、デザインの精度もぐんと上がっていきます。
おわりに:「表現」も「伝達」も、どちらも大切
アートとデザインは別モノですが、どちらが上でどちらが下という話ではありません。
大切なのは、「いま自分がどちらをしているのか」を意識すること。
伝えたいならデザインの思考で、
表現したいならアートの思考で。
その使い分けができれば、きっとあなたの作品は、もっと多くの人に届くようになります。
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