第1章:UIは“平面”から“空間”へシフトしている
UIデザインの世界では、長らく「フラットデザイン」や「ミニマルUI」が主流でした。特にスマホが普及して以降、情報密度の最適化や視認性の高さが求められる中で、平面的なUIが好まれてきた背景があります。
けれど、ここ最近、空間的な演出=“3D的なUI表現”が再び注目され始めているのを感じます。
そしてこれは、単なる流行や装飾表現ではなく、UX(ユーザー体験)そのものを変える可能性を秘めた進化です。
たとえば、
- Apple Vision Pro のようなMR(複合現実)デバイス
- WebGL / Three.js などによる3Dグラフィックスの高度化
- モーショングラフィックス × UI の融合によるインタラクションの深化
こうした流れが一気に加速していて、もはや「平面のUIに影と動きをつけたもの」が3Dっぽい、なんてレベルでは済まなくなってきています。
UIにおける“空間”の概念は、視覚的な奥行きだけじゃない。
体験そのものにレイヤーを持たせるという新たな設計思想が根底にあるんです。
第2章:そもそも“3D UI”って何がどう違うの?
「3D UIって言っても、単に奥行きがあるだけでしょ?」
…って思う方も多いかもしれません。でも、実は全然ちゃうんです。
3D UIの本質は“Z軸の導入”にあります。
これまでのUIは「X軸(左右)とY軸(上下)」だけで設計されてきました。つまり、2次元の中で“並べる”“重ねる”というルールの中で整理されていたんです。
しかし、3D的UIはそこに“Z軸=深度(depth)”が加わります。
このZ軸が入ることで、
- ユーザーがインターフェースの中を“歩くように”進む
- 情報同士が“物理的距離”を持つ
- 階層や重要度を、視覚的奥行きで自然に示せる
といった、今までのUIとはまったく異なる空間的なUX設計が可能になります。
例)Z軸で変わる“ナビゲーション”の常識
今までのメニュー:
- タブで並べる or ハンバーガーメニューに格納
- 要素の上下・左右の並びで情報を整理
3D的メニュー:
- 空間の中に項目が浮遊している
- ユーザーが「空間を覗き込む/移動する」ことでアクセスする
- コンテンツとの物理的距離=関心度やストーリーの流れを表現可能
こうなると、UIはもはや“スクリーン内で情報を操作するだけのもの”ではなくなります。
まるで“体験するUI”、“旅するインターフェース”へと進化するんです。
第3章:モーション・インタラクションとの関係性
3D UIは、見た目だけでは成立しません。インタラクション=操作感/動きとのセットでこそ、初めて意味を持ちます。
たとえば:
- ホバーで“奥へ引っ込む”ボタン
- スクロールで“視点が動く”コンテンツ
- スワイプで“空間の中を移動する”感覚
こうした動きの演出には、「感覚としてのリアルさ」だけでなく、脳の情報処理の仕組みとマッチするUX設計という側面があります。
人間の脳は、2Dよりも3Dの方が直感的に理解しやすい構造になってるんよね。
だからこそ、「触って気持ちいいUI」や「使って違和感のないUX」は、モーションと深度の設計次第で生まれると言っても過言じゃないです。
第4章:実例で見る“3D × UI”の現在地
「3D UIって言っても、実際どんな場面で使われとるん?」
という方のために、ここではいくつかの事例を紹介します。
① Apple Vision ProのUI
AppleのVision Proでは、アプリが“空間に浮かぶウィンドウ”として表現され、ユーザーは視線や指のジェスチャーで操作します。
これはまさに「3D × UI」の象徴的な事例。
現実世界とデジタル空間をシームレスに繋ぐため、情報に“奥行き”と“距離感”を持たせた設計がされています。
さらに、複数のアプリを同時に空間配置できることで、「並列処理」が自然に行えるUXになっています。
② Webでの3Dインターフェース(Three.js, Rive, Spline など)
ブラウザ上でも、今や軽量で滑らかな3D演出が可能になってきています。
- Three.js:高度な3Dグラフィックス表現が可能
- Spline:デザイナー向けに手軽に3D UIモックを作れる
- Rive:インタラクションとモーションの統合が強い
たとえば、製品の3Dビューアー付きLPや、マウス操作によるリアルタイム視点操作など、もはや“静的なページ”ではなくなっています。
③ スマホアプリでの“擬似3D”演出
完全な3Dでなくても、擬似的な3D UIを導入してる例も増えてきました。
- カードが奥へ沈むようなエフェクト
- パララックス効果(スクロールによって背景が奥へ動く)
- 回転するインターフェース(例:Apple Musicのアルバムジャケット)
こうした演出も、ユーザーの体験を“空間的”にする重要なファクターです。
第5章:未来のUIは“空間デザイン”の仕事になる?
ここまで見てきたように、「3D × UI」はすでに現実のものになってきています。
では、この先どんな変化が起きるのか?
① デザイナーに“空間認識”と“動線設計”のスキルが求められる
これからのUIデザイナーには、PhotoshopやFigmaのスキルだけでなく、以下のような次世代スキルが必要になるでしょう。
- 空間的UI配置のセンス(Z軸の活用)
- モーションによる体験設計
- VR/AR/MRのユーザー体験設計
つまり、「画面をデザインする人」から「空間を構築する人」へと役割が変わっていくんです。
ちょっとした動きの違いや、奥行きの付け方ひとつでUXが激変する時代やけぇ、今のうちに感覚を磨いておくのはマジで大事です。
② 体験の“シームレス化”が進む
将来的には、スマホやPCという端末に縛られず、
- 身体動作+視線+音声で操作できるUI
- 実空間との連動型インターフェース
- 感情や思考をトリガーにしたUI(感情UX)
こういった“ノーデバイス”化・“超パーソナライズ”化が進むと予測されます。
つまり、UIは“表示するもの”から“環境そのもの”へと変貌していく。
第6章:「じゃあ今、何を学べばええん?」
「未来の話は分かったけど、今のうちに何しとけばええん?」
って、きっと誰もが思ったはずです。
ここでは、“これからのUIデザイナー”として身につけておきたいスキルとマインドセットを具体的に書いていきます。
①「2D思考」から脱却しよう
まず意識したいのが、平面の中だけでUIを考える癖から脱却すること。
FigmaなどでUI設計する時も、Z軸(奥行き)や動きの可能性を意識してみましょう。
例えば:
- 奥に向かってスライドするUI
- 浮き上がってくるボタン演出
- 手前/奥の概念でナビゲーションを構築する
こういう「脳の使い方」を日常的にやっておくと、3D化されたUIにもスッと適応できます。
② モーション・アニメーションの基礎を学ぼう
“動き”は、UIとUXを次のステージに押し上げる最大の武器。
ただし、自己満足な演出ではなく、「伝える・気づかせる・誘導する」ための動きであるべきです。
- After EffectsやPrinciple、Riveなどのツール
- イーズイン・アウトや遅延効果などのタイミング理論
- 動きによる感情トリガーの心理的理解
こういったスキルは、3D時代でも“核”になります。
③ 空間認識スキルとVR/ARツールの習熟
現実と仮想が混ざる未来では、現実世界のサイズ感や配置感覚を持っているかが重要になってきます。
具体的には:
- Blender や Spline で3Dオブジェクトの操作を体験してみる
- AR体験アプリでUX設計の流れを観察してみる
- UnityやUnreal EngineでUIオーバーレイを実装してみる
はじめは触れるだけでもOK。“思考が平面に縛られてないか?”という視点が鍛えられます。
第7章:まとめ ─ 世界は“奥行き”を求めている
かつて「フラットデザイン」が流行り、装飾が削ぎ落とされた世界が続きました。
でも今、UIはふたたび“深さ”を求められ始めています。
それは単なるビジュアルのトレンドではなく、
「体験のリアリティ」を求める時代の必然。
これからのUIは、
静止画では伝えきれない「空間」と「感情」をどう描くかという領域へと進んでいきます。
最後に ─ ご相談はこちらから
この記事を読んで、
- 「自分のサービスに3Dやモーションを取り入れたいけどどうしたらええん?」
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という方は、下記のフォームからご相談ください。
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