第1章:ミニマルの本来の意味、忘れてない?
「シンプル・イズ・ベスト」という言葉、もう聞き飽きたほど世の中に浸透してますよね。でも最近、それが“正義”を通り越して、“呪い”になっている場面をよく目にします。
僕もWebデザインやグラフィックの仕事をしている中で、クライアントから「もっとシンプルにしたい」「要素が多すぎる気がする」と言われることは少なくありません。
でもちょっと待ってほしいんですよ。
本当にそれ、”良いシンプル”ですか?
多くの人が「シンプル=削ぎ落とすこと」だと思ってるんですが、実はミニマルデザインの本質は「伝えるために、最適化された構成」にあります。つまり、“無”にすることではなく、“核”だけを残すこと。
その違いを無視したまま「シンプルにして!」とだけ言われると、プロとしては正直ヒヤッとします(笑)
第2章:“ミニマル信仰”が招く“無”デザイン
最近はSNSのテンプレ、ノーコードツール、Canvaなどの影響もあって「誰でも作れるデザイン」が一気に増えました。それ自体は素晴らしい流れだと思ってます。でも、そこに「ミニマル=正解」という思想だけが独り歩きしてしまうと、危うさもあるんです。
よくある“無”デザインの例
- 配色は白とグレーだけ
- 見出しと本文の差がほとんどない
- アイコンやボタンが目立たない
- 情報の強弱が全くない
- 構成要素が均一で、見る人の視線がどこにも止まらない
こういうデザインって、一見「洗練されている」ように見えるかもしれないけど、ユーザーにとっては「読みにくい」「わかりにくい」「どこ見たらいいかわからん」の三重苦になるんですよね。
広島弁で言うなら、「なんか、見た目はええ感じなんじゃけど、よぉわからん」って感じ(笑)
第3章:なぜ“無”デザインが量産されるのか?
この現象の裏にはいくつかの要因があります。
1. 見た目の美しさが先行する時代背景
特にSNSでの可視化優先の時代、スクショ映えやサムネ映えを狙った結果、意味性より“整って見えるかどうか”が優先されてしまう傾向が強まっています。
でも、デザインのゴールって「見る人に何かを伝えること」のはず。美しいのは前提としても、「伝わるかどうか」が置き去りになると、本末転倒です。
2. クライアントの“安心感バイアス”
これは制作現場あるあるなんですが、「白背景・細ゴシック・中央揃え」って、ある種の“テンプレート安心感”があるんです。でもこれ、言い換えると「個性を削ぎ落とす方向」なんですよね。
3. ツールによる“均質化”の加速
CanvaやSTUDIO、Wixなどのノーコードツールの影響で、誰もが「プロっぽいもの」が作れるようになった。でも裏を返せば、みんな同じに見えるデザインが量産される原因にもなってる。
“シンプル”の暴走が止まらない ─ ミニマル信仰が生む“無”デザイン問題【2/3】
第4章:伝わるミニマルと、伝わらないミニマルの違い
では、「良いミニマル」と「悪いミニマル」は何が違うのか?
この問いに明確な答えを出すためには、「シンプル=機能の削減」ではなく、「伝達効率の最適化」という視点が欠かせません。
✔ 良いミニマルは“導線”がある
良いミニマルデザインは、削ぎ落としながらも、ユーザーが迷わない“視線の誘導”や“構造的なわかりやすさ”が組み込まれています。
つまり、無駄がない=設計が明確ってこと。
逆に、伝わらないミニマルは情報の階層が不明瞭で、どこを読んで何を感じてほしいのかが不明。シンプルすぎて“無”になってるパターンですね。
✔ 行間と余白に“意味”がある
「なんとなくスカスカに見えるから余白を詰めました」みたいなケース、実は結構あるんですよ…。
でも、余白は“間”を生み、ユーザーの認知負荷を下げる大事な機能なんです。詰めること=読みやすい、ではない。
「この余白が何を意味しているのか?」
この問いを自分に投げかけるだけでも、デザインの質って変わります。
第5章:“機能するミニマル”に必要な設計力
じゃあ、どうすれば“機能するミニマル”が作れるのか?
ここからは少し実践的な設計思考の話をしていきます。
1. 情報設計(IA)を先に整える
どんなに美しいUIでも、構成が破綻していたら使いにくくなります。
なので、まず必要なのは「情報の優先順位と関係性を整理すること」。
これはナビゲーション構造だけじゃなく、1ページ内のセクション構成や見出しの強弱にも関係します。
2. コンテンツの“核”を絞る
「何を伝えるためのページなのか?」を、たった一言で言えるようにしておくことが大事です。
例えば「このLPは安心感を伝えるもの」と決めたなら、フォントや配色、写真選定まで全部“安心”に寄せていく。
これがないまま“オシャレさ”だけで構成すると、結果として“伝わらないミニマル”になるんです。
3. 余白の“意味設計”をする
余白はただのスペースではありません。
要素間の“関係性”や“視線の流れ”をコントロールするための重要な設計要素です。
たとえば、CTAボタンの上下に余白を持たせると“強調”になりますが、本文の段落とボタンの距離が同じだと“埋もれる”こともある。
この距離設計ひとつで、コンバージョンにも直結します。
第6章:あなたのブランドを“無”にするな
個人的に一番危惧してるのは、「シンプルだから安心」「主張がないほうが好かれる」と思ってるブランドが増えていることです。
でも、冷静に考えてみてください。
“覚えられないブランド”に、価値はあるでしょうか?
どれだけ綺麗に整っていても、印象に残らなければ、それは存在していないのと同じなんです。
シンプルを追い求めるあまり、“あなたらしさ”まで削ぎ落とすのは本末転倒。
“シンプル”の暴走が止まらない ─ ミニマル信仰が生む“無”デザイン問題【3/3】
第7章:ミニマルの中に“ブランドの芯”を残す方法
シンプルでもブランドらしさを表現する方法は、ちゃんとあります。
重要なのは「何を削ぎ落とさないか」を見極めることなんです。
✔ 1. “らしさ”のキーワードを決める
まず、「このブランドはどう見られたいのか?」を言語化しておく。
たとえば、「信頼感」「遊び心」「高級感」「親しみやすさ」などのキーワードを設定して、それが伝わる要素を意識的に“残す”。
これは、カラーやタイポグラフィだけでなく、ボタンの形状や余白の取り方、ホバーアニメーションの速度にも現れるんですよ。
✔ 2. トンマナ(トーン&マナー)を徹底する
ミニマルでも、トンマナが統一されていれば世界観は表現できます。
逆に、フォントのウェイトやボタンの角丸がバラバラだと、どれだけ余白で整えても印象はチグハグになります。
特にスマホ表示で“なんとなく”ずれていると、ユーザーの印象はガクッと落ちます。
✔ 3. 「引き算」より「選び抜く」視点
ミニマル=“削る”と考えると、どんどん無機質になっていきます。
でも本当は、ミニマルって「必要なものを選び抜く」作業なんですよね。
たとえば、写真1枚選ぶとしても、「伝わる・らしさがある・印象に残る」ものを選び抜けば、それだけで強い。
削る前提じゃなく、意味と必然性で構成されたシンプルさこそが、“伝わるミニマル”の正体です。
第8章:本質的なデザインを一緒に考えたい方へ
もし、あなたが「もっと意味のあるデザインを目指したい」と思っていたり、
「なんとなくでシンプルにしていたけど、ちゃんと設計したい」と感じていたら──
一度、我々と一緒に“本質的な設計”を考えてみませんか?
デザインは見た目だけじゃありません。
伝わる構造・残すべき感情・未来のブランド体験まで含めて、全部が“設計”です。
「なんか良い感じ」じゃなく、「なぜそれが良いのか」を言語化しながら進める。
そんなプロセスを一緒に体験してみたい方は、ぜひ気軽にご相談ください。
終わりに:ミニマルは“終点”ではなく“始点”
シンプルは、終着点じゃありません。
本当に伝わるミニマルデザインとは、最小限の中に最大限の意図と熱量が詰まっているものです。
「無」に見えるデザインが、「在る」ことの証明になっているか。
その問いを、自分のアウトプットに投げかけ続けることが、プロのデザイナーにとっての鍛錬でもあります。
表面ではなく、本質で勝負する。
それが、これからの時代に求められる“ミニマル”の姿だと、僕は思っています。
以上、最後まで読んでくださってありがとうございました!
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