第1章:デザイナーにとって“真似”とは何か?
「人のデザインを真似るのって、パクリじゃないの?」
この言葉、特に駆け出しのデザイナーからよく聞く話です。
確かに、“オリジナリティ”が評価されるこの世界において、
「真似=悪」と捉えてしまうのは、ある意味当然かもしれません。
でも実は、真似ること=創造の入り口なんです。
特にデザインのような感覚×技術のハイブリッド分野では、
「学ぶは真似ぶ」と言われるように、“真似ること”から始まる成長こそが王道なんですよね。
僕自身も、昔は「オレのデザイン力、全部独学なんで!」って言いたかった時期がありました(笑)
でも振り返ると、先人たちの作品を徹底的に模倣して、観察して、再現して、
そこから自分なりのアレンジが生まれた──という流れがほとんどでした。
このプロセスには、日本の伝統的な学び方「守破離(しゅはり)」が深く関係しています。
第2章:守破離とは?─ 日本の“学びの型”
「守」:徹底的に型を守る
まずは「型」に倣い、素直に真似ることから始まります。
これは剣道や茶道、能楽などの世界でも共通している教えで、
オリジナリティはこの時点では求められません。
デザインで言えば、
- 優れたバナーの構成をそっくりそのまま再現してみる
- 有名なサイトのUIをFigmaでトレースしてみる
- 色使いや余白のバランスを一つずつ“写経”のように真似てみる
──これがまさに「守」です。
この段階でのポイントは、なぜこのような構成・配色・余白なのか?
という「意図」を読み解こうとする姿勢。
表面だけをなぞるのではなく、思考まで“模倣”するんです。
「破」:型を破る
ある程度、型が身につき“なぜそうするのか”が体得できてくると、
自分なりのアレンジや崩しができるようになってきます。これが「破」の段階。
例えば、
- トレースしたデザインに独自の写真選びを加える
- フォントを変えてみて印象の違いを試す
- 配色のセオリーをあえて外してみる
というように、意識的に崩す=試行錯誤を重ねるタイミングです。
「ここまで来ると、もう“ただの模倣”とは違う」
──そう実感できたら、それは立派な“創作”の一歩です。
「離」:型から離れる
最終段階の「離」は、
型そのものから離れ、自分のスタイルや世界観を確立していくフェーズ。
この段階に入ると、他人のデザインに影響されることなく、
「自分の中の“違和感センサー”」で作品を整えていけるようになります。
ここまでくると、
- 「この配置、なんか気持ち悪い」って思える
- 「こうした方が見やすい」と判断できる
- 「オレならこうする」って選べる
──そんな**“判断力”と“感性”が一致する瞬間**が訪れます。
でも、この「離」に至るには、
「守」と「破」をどれだけ丁寧に積み重ねてきたかがすごく大事なんです。
第3章:「真似る」ことの本質は“解像度を上げる”こと
ここで僕が声を大にして言いたいのは、
「真似る」って、“感覚の解像度”を上げる訓練だってこと。
例えば、ぱっと見はシンプルに見えるデザインでも、
いざ真似しようとすると──
- あれ?この余白、なぜか整って見えない…
- フォント、同じはずなのに“締まり”がない…
- なんでこのボタン、クリックしたくなるんじゃろ?
…っていう細かい違和感が出てくるんよね。
それに気づけるかどうか。
そして、その違和感を“再現”するために手を動かし続けるか。
これが「センスを磨く」ってことなんです。
第4章:「真似=悪」じゃないけど、“無意識の模倣”はNG
さて、ここで一度立ち止まって考えてほしいのが、
「真似る」と「パクる」の違いです。
■ パクりとの違いって?
真似ること自体は学びのプロセスとして必要不可欠。
ただし、**「何も考えずに表面だけなぞること」**や
**「他人の成果を自分のものとして出す」**行為は、
当然ながら倫理的にも法的にもアウトです。
たとえば──
- トレースしたデザインをそのままポートフォリオに掲載
- 他者の作品を“自作”としてSNSに投稿
- 商用案件でリファレンスをそのまま再現
これらは**「意図ある学び」ではなく、ただの盗用**。
特に商用に絡むと、著作権侵害にもなり得るので要注意です。
広島弁で言うと、「それ、ちょっとやりすぎじゃろ」ってやつですね(笑)
第5章:守破離を活かす“意図ある模倣”のコツ
では、どうすれば“学びとしての真似”を効果的に活かせるか?
ここでは、僕が実際にやって効果があったコツを紹介します。
✅ Step1:「模写対象」を明確に決める
たとえば、「余白感のあるミニマルデザインを学びたい」と思ったら、
BehanceやPinterestでそのジャンルに特化したデザインを5〜10個選び、
意識的に模写対象を絞ります。
「なんとなく良い感じ」ではなく、
「どこが学びたいポイントか」を明確にすることで、
模倣の質がグッと上がります。
✅ Step2:再現→比較→解説
手を動かして模写するだけで終わらせず、
以下の3ステップで振り返ることが大事。
- 再現:構成・配色・文字サイズまで完全再現
- 比較:オリジナルと自分の再現を並べて見比べる
- 解説:「どこが違う?」「なぜ違う?」を言語化
この「言語化」のステップが、抽象化能力を高めてくれます。
✅ Step3:“限定アレンジ”を入れる
完全模倣の次は、「ちょっとだけ変える」という練習。
たとえば──
- 色だけ自分の好きな色に変えてみる
- 写真だけを差し替えてみる
- フォントを変えて印象の違いを体感
これを通じて、「自分の好みの傾向」や「違和感ポイント」が見えてきます。
第6章:守破離は“成長のループ”でもある
ここまで「守→破→離」と説明してきましたが、
実はこの3つは一度きりの流れではなく、ぐるぐる循環するループなんですよね。
成長するほど“新しい守”が見えてくる
たとえば、ある程度「離」に到達したと思っても──
- 新しいジャンルに挑戦したとき
- 自分の作風がマンネリ化してきたとき
- トレンドが変わったとき
こういうタイミングで、また「守」に戻って“学び直す”ことが必要になります。
つまり、守破離って
**「デザイン人生を通して回り続ける“成長サイクル”」**なんです。
僕もいまだに、「あ、この人のデザイン、真似して勉強したいな〜」って思うこと、めっちゃありますから(笑)
第7章:「センス」は磨けるし、“模倣力”がそれを超える
デザインにおいてよく語られる「センス」という言葉。
でも、僕はこう思っています。
「センスがある人」って、実は“優秀な観察者”であり“良質な模倣者”なんじゃないか?
センス=「観察力」と「再現力」の掛け算
感覚でやってるように見えるデザイナーほど、実は──
- 「このレイアウト、黄金比使ってるな」
- 「この写真、彩度を抑えて文字が映えるようにしてるな」
- 「余白の取り方がテンプレ通りじゃなくて自然」
…って具合に、無意識レベルで**“観察と分析”をしてる**んです。
つまり、“模倣する力”を突き詰めた先に
**「センスの正体」**がある。
「天才型」に見える人ほど、実は“守”を徹底してる
デザイン業界で「天才」と呼ばれているような人たちも、
インタビューで「初期はトレースしまくってた」と語ることは多いです。
たとえば──
- 有名なタイポグラファーが、活字ポスターを100枚以上模写してた
- UIデザイナーが、アプリデザインを毎日1枚トレースしてた
- 映画ポスターを模写して構図のセオリーを体で覚えた
「センスある人」は、生まれつきじゃなく、意識的な訓練の積み重ねなんですよね。
第8章:教育現場でも「守破離」が効く理由
僕がたまに講師をやるとき、生徒さんたちに
「このデザイン、真似して作ってみて」と課題を出すことがあります。
その時に──
- 「真似でいいんですか?」と驚かれたり
- 「オリジナルじゃなくてもいいの?」と不安がられたり
ってことがあるんだけど、僕はこう答えます。
「“型”を知らずに“自分らしさ”を語っても、ただの自己満足になるけぇ」
教育で大事なのは、「意図をもった模倣」
むしろ“考えながら真似る”ことで、
- 構成
- 余白
- 配色
- ヒエラルキー(情報の強弱)
といった重要な要素が身体にしみ込むようになります。
真似ることで、逆に「自分らしさ」が研ぎ澄まされる。
これは教育現場でも、プロの現場でも変わらんと思う。
第9章:守破離の先にある“自分だけの美学”へ
「守破離」は単なる修行論じゃありません。
それは**“創造力の育成ルート”であり、
最終的には「自分だけの美意識」に到達するための地図**なんです。
「守」があるからこそ「離」が活きる
「我流」は時に危険です。
でも、「型」を徹底的に守った上での我流は──
“型破り”ではなく、“型を極めた末の自由”
つまり、守破離の最終形は**“自在”**なんです。
- 型を知っているけど、縛られない
- セオリーを踏まえた上で、壊せる
- 引き算すべき時と足し算すべき時を直感で判断できる
ここに至って、はじめて「オリジナリティ」や「センス」が
“言語化できる再現可能なスキル”として機能してきます。
おわりに:「真似る=学びの最高効率」やけぇ
「真似るのは悪いこと」
そう思っていた自分に言いたい。
「真似ることを、もっと誇ろう」
守破離は、クリエイターの基礎であり、最高の近道。
“良い模倣”を重ねていけば、自然と“自分のスタイル”が育ってきます。
僕も、まだまだ学びの途中。
先輩と一緒に、デザインの守破離、極めていきたいなって思っとるけぇ!
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