ここ最近、“ちょいダサ”なデザインが流行っているのを感じませんか?
Y2K(2000年代初頭)風のビジュアル、Windows XPみたいなメタリックUI、 ちょっと古くさいフォントやドット感のある写真演出……。
ぱっと見、「えっ、それでいいの?」って思うようなデザインが、 むしろ「イケてる」とされている。
これは単なる“流行り”ではなく、時代の心理を反映したビジュアル戦略だと思っています。
この記事では、この“ちょいダサ”の正体を
- ネオレトロ
- Y2K
- エモ系
などのキーワードを通じて紐解き、なぜ人は「少し野暮ったいデザイン」に惹かれるのかを解説していきます。
第1章:“ちょいダサ”ってそもそも何?
まず、“ちょいダサ”という言葉の定義からはっきりさせましょう。
「ダサい」と言うとネガティブに聞こえますが、 ここでいう“ちょいダサ”は「意図的な外し」や「ユーモラスなエッジ感」のこと。
たとえば、以下のようなものが当てはまります:
- 影の落ち方が微妙に昔風
- プリクラのようなキラキラ演出
- コントラスト強めの配色
- マウスカーソルがピコピコ動く演出
いずれも、かつて「ダサい」と言われていたもののリバイバルです。 でも現代では、“ノスタルジー”+“ズラし”によって、おしゃれとして成立している。
つまり、“ちょいダサ”は、「意図されたダサさ」なんですね。
第2章:Y2Kデザインの背景にある「不安と回帰」
では、なぜY2Kのようなテイストが流行っているのでしょうか? そのヒントは、人間の深層心理にあります。
Y2Kとは、2000年代初頭のテクノロジー文化やファッションを指します。 例を挙げると:
- サイバーフォント(Ex: OCR A Extendedなど)
- メタリック×グラデーションのUI
- ギラついた配色
これらは、テクノロジーへの希望と不安が混在していた時代の象徴なんです。
──21世紀になったら何が起こるんだろう? ──機械は人間を超えるのか? ──でもなんかワクワクする!
この「ちょっと怖いけど、ちょっと楽しい」という感覚。 今のAI時代の空気感と、ちょっと似てませんか?
人は不安なとき、「安心していた時代」や「子どもの頃の世界」に戻ろうとする傾向があります。
だからこそ、Y2Kのような“あの頃っぽさ”が、今の時代にフィットしてるんじゃと思うんです。
第3章:“エモ系”はなぜZ世代に刺さるのか
もう一つのキーワードが「エモ系」です。
エモい──感情的で、懐かしくて、ちょっと切ない。
Z世代を中心に、InstagramやTikTokで「エモい投稿」が人気なのはご存知の通り。
これは単に「ノスタルジーが好き」って話ではなく、 「不完全であることの肯定」にもつながってると思っています。
たとえば、以下のような表現が“エモ系”によく見られます:
- ザラついた画質
- 昭和・平成っぽい色味(オレンジ×ネイビーなど)
- 手書き風文字
- ちょっと間延びしたレイアウト
どれも「完璧に整っていない」「ちょっとクセがある」表現。
でもそこに、“人間らしさ”とか“余白のある感情”がにじみ出る。
今の若者たちは、「整いすぎた世界」に疲れているのかもしれません。
だからこそ、少し崩れたもの・ゆるいものに惹かれている。
その代表格が、いわゆる“ちょいダサエモ系”なんじゃと思います。
第4章:ネオレトロとは「選ばれた懐かしさ」
“ネオレトロ”という言葉も、ここ数年よく耳にしますよね。
これは単に「レトロなものを再利用してる」って話ではなく、 「レトロの中から“美味しいとこだけ”を抽出して現代的にアレンジする」こと。
たとえば:
- 昭和のアニメ風だけど、色使いは今っぽくて映える
- 昔の家電の丸みやロゴを活かして、プロダクト化する
- 古いPC画面のUIを、今の操作感にアジャストする
そう、“全部昔風に戻してるわけじゃない”んです。
ここで面白いのが、「懐かしさの選別」が起きていること。
つまり、「その世代の人が、いい思い出として記憶している“レトロ”だけが選ばれる」ということです。
しかもこの選別、時代が進めば進むほど細分化してる。
──80年代レトロ ──90年代レトロ ──平成初期レトロ(!?)
レトロは“後ろ向きなもの”じゃなくて、時代への愛と再解釈なんですね。
そう思うと、ネオレトロって「懐かしさで未来をつくる」ってことなのかもしれんね。
第5章:なぜ“ちょいダサ”がウケるのか?心理の3つの理由
ここでちょっと心理学的に整理してみましょう。
“ちょいダサ”がウケる理由は、以下の3つに集約されると思っています:
① 親近感と共感
ちょっとズレてる、ちょっと野暮ったい── そういった“不完全さ”って、人間らしさを感じやすい。
「うわ、なんかオレもこのフォント昔使ってたわ〜」って思うと、 それだけで一気に距離が縮まる。
完璧な美しさよりも、「身近なズレ」が共感を生むんですね。
② 差別化と記憶効果
今のデザインって、どれもキレイで整っていて、ある意味“無個性”になりがち。
そこに“ちょいダサ”なものが現れると、めちゃくちゃ目立つんです。
「なんか昔のWindowsみたいで逆にイイ」 「え、このフォント!懐かしい!笑」
そうやって、記憶に残りやすくなる。 つまり、マーケティング的な効果もあるというわけです。
③ 安心と回帰の欲求
社会が不安定になればなるほど、人は“かつての安定”を求めます。
昭和レトロやY2K、エモ系── どれも、過去の「なんとなく安心できた世界観」に帰る行為です。
それはまるで、ちょっと疲れた時に、 実家の味噌汁を飲みたくなるような感覚に似てるかもしれん。
“ちょいダサ”は、現代人のメンタルを癒す「感情回帰デザイン」でもあるんです。
第6章:“ちょいダサ”をデザインに取り入れるコツ
じゃあ実際に「ちょいダサ感」を取り入れたいとき、どうしたらええんか?
僕がよく使うアプローチはこのあたりです:
① フォントで“ズレ感”を出す
いま主流の洗練されたサンセリフじゃなく、 ちょっと昔風のゴシック体や明朝体を入れてみる。
日本語なら「ナウい文字」「秀英体」「アポロ」みたいなレトロ書体、 英語なら「Cooper Black」や「Comic Sans」も、意図的に使えばアリです。
ただし、やりすぎ注意。 “わざとやってる感”が伝わる範囲に留めるのがコツ。
② カラーパレットを“くすませる”
エモ系の特徴として「くすみカラー」「ノスタルジックな配色」があります。
たとえば、Y2K風なら:
- メタリックグレー
- ネオンパープル
- スモーキーピンク
少し彩度や明度をずらすことで、 意図的に“古くささ”と“今っぽさ”を共存させることができます。
③ 写真や素材で“時代の記憶”を呼び起こす
古い家電、街並み、VHS風のエフェクト── 記憶を呼び起こすモチーフは、“ちょいダサ”演出にかなり有効です。
特にZ世代向けに作るなら、「体験してないけど見たことある」がキーワード。
逆にミドル世代には、「あの頃、確かにあった」が刺さる。
この違いを意識するだけで、“ダサくて新しい”の感度がグンと上がります。
第7章:トレンドは“回帰”と“意味づけ”のループ
結局、デザインのトレンドって、常に回り続けてるんですよね。
でもそれは“ただ戻ってる”わけじゃなく、 「違う意味をまとって再登場してる」という感覚に近い。
だから僕は、“ちょいダサ”の流行を見てこう思うんです:
「人は不安になった時、デザインに“ぬくもり”や“ズレ”を求めるんじゃないか」
完璧な正解よりも、ちょっと間違ってるぐらいが気楽。
整いすぎた未来より、懐かしい明日がちょうどええ。
そうやって、 人は「感情で未来を選んでる」のかもしれません。
おわりに:「ちょいダサ」の先にある“感情設計”へ
「“ちょいダサ”が流行る理由」を通して伝えたかったのは、
単に流行を追うのではなく、 人の心に寄り添う“感情設計”の視点を持とうってことでした。
見た目を整えるだけじゃなく、
- 誰に
- どんな気持ちになってもらいたくて
- なぜこのデザインを選んだのか
そこにちゃんと「理由」があると、 デザインはグッと深みを持ちます。
もしあなたが「今っぽくしたい」「ちょいダサってどこまで?」と感じているなら、
ぜひ一度、僕にご相談ください。
あなたの「伝えたい」を一緒に整理して、ちゃんと届くカタチにしていきましょう。
──では、また次の記事で。
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