“美意識の押し売り”になってない?── クライアントと戦わずに勝つ方法

交渉術

第1章:「美意識」がぶつかる瞬間

デザイナーとして仕事をしていると、どうしても避けられない瞬間がある。
それは──クライアントとの「美意識の衝突」や。

「え、それはダサいからやめた方が…」
「いや、こうした方が絶対かっこええって!」
「これじゃユーザーに伝わらんと思いますよ?」

…そんなふうに思いながらも、
「ご提案ありがとうございます、ではこの方向で…」って引き下がる自分に、
モヤモヤした経験はないだろうか。

僕も何度もあった。
でもね、あるときから気づいたんよ。

“戦って勝つ”んじゃなくて、“戦わずして勝つ”方がカッコいい。

しかも、そっちの方がビジネス的にも評価されやすいし、クライアントとの関係も良好に保てる。

今回はそんな「美意識の押し売り」をせずに、
ちゃんと自分の表現を通すためのコミュニケーション術をテーマにしてみた。


第2章:そもそも、誰のためのデザイン?

この問いにちゃんと答えられないデザイナーは、意外と多い。
僕自身も昔は、「クライアントが喜ぶデザイン」をつくろうとしてた時期があった。
でも、次第に思ったんよ。

「クライアントが“喜ぶ”もの」と
「クライアントが“目的を達成できる”もの」は、別物だって。

そもそもデザインは、

  • クライアントのビジネス目的を達成し
  • エンドユーザーに正しく届き
  • 社会に対してポジティブな印象を残す

この3点が揃って、はじめて「良いデザイン」と言える。
つまり、“クライアントが好きなデザイン”は、必ずしも“正解”ではない。

じゃあどうすれば、自分の「正しさ」を通せるのか?


第3章:「戦う」ではなく「導く」

この章のキーワードは、“納得感のある導線”を作ることや。

よくある失敗はこれ。

  • いきなりプロの意見で殴る(「それはおかしいです」「こっちの方がいいです」)
  • 感覚ベースで伝える(「自分的にはこっちのが好きなんですよね〜」)

これ、ほんまに多い。
でも、人間は“自分で選んだ”と思えないと納得しない生き物なんよ。

👉 だから僕は、「選ばせるプレゼン」をする。

たとえば:

A案(クライアント案)
・メリット:ブランドの個性が伝わる
・デメリット:文字情報が多く、読了率が下がる可能性

B案(僕の提案)
・メリット:情報整理されており、直感的に伝わる
・デメリット:ややインパクトが弱いと感じる可能性あり

こうやって、「あえて両方の特徴を並べる」。
しかもクライアント案の“良さ”も言語化してあげる。

これやると、ほぼ100%クライアントは「じゃあB案でいこうか」と言ってくれる。

不思議やけど、これは“相手の美意識を肯定した上で、論理的に導いてる”からなんよね。


第4章:デザインを「自分の作品」にしない

これはありがちな罠なんやけど、
デザイナーってつい、自分の手がけたデザインを「作品」扱いしてしまいがちなんよ。

たとえば:

  • 自分のポートフォリオに載せたいから、かっこいい案を採用してほしい
  • トレンドを押さえたくて、どうしても今っぽくしたい
  • なんとなくこの配色が好きだからこっちにしたい

──わかる、めっちゃわかる。
でも、これは“目的”ではなく“自分の好み”が判断基準になっとる状態なんよね。

これは、「美意識の押し売り」の正体とも言える。

👉 じゃあ、どう考えればええん?

僕がよく使うフレームはこれ。

「これは誰に届けるための、どんな効果を狙ったデザインか?」

この問いを、自分にもクライアントにもぶつける。
そして「デザインの評価軸」を“見た目”ではなく“目的に対する適合性”に置く。

これだけで、だいぶ視界がクリアになるよ。


第5章:勝つために、負けてあげる戦略

え?負けるのに勝つって、どういうこと?って思うかもしれんけど
これ、めちゃくちゃ使える考え方なんよ。

✅ 「最初の1回はあえて通さない」

これは僕が実際にやってるテクニックなんやけど、
あえてクライアント案を一度そのままデザインに反映する。

そしたら、だいたいこんな感じの反応が返ってくる。

「あれ?なんか思ったよりダサいな…」
「うーん、なんか違いますね…」
「これ、ユーザーに伝わるんですかね?」

──はい、それがワナです(笑)

ここで「ですよね〜!」と乗っかると、今度は相手が“納得した状態”で修正依頼をくれる。
そのときに、自分の提案をスッと出す。

「じゃあ、この方向性もご提案させてもらっていいですか?」
「ユーザー視点でいうと、こんな形もアリかなと」
「こちらの方が結果に繋がりやすいと思います」

この流れ、かなり効く。

大事なのは、「戦う」んじゃなくて、
“失敗の自覚”をクライアント自身にさせることなんよ。


第6章:クライアントの“言葉の裏”を読む

表面上の要望だけ聞いて、そのままデザインに落とし込むと
だいたいズレる。

  • 「もっと派手にしたい」= インパクトが弱いと感じてる
  • 「今っぽくしたい」= 古臭い印象を持ってる
  • 「自分っぽさを出したい」= ブランドの独自性が表現できてない

クライアントは、正確な言葉で“真の課題”を伝えられるとは限らない。

だからデザイナーがやるべきは、「翻訳」や。
ヒアリングは、「要望」ではなく「意図」を引き出す作業。

たとえば:

クライアント「もっと若い子向けにしたいんです」

僕「なるほど、ターゲット層がZ世代に近いということでしょうか?
それとも、SNS映えを狙ってトレンドを意識したいという意味合いでしょうか?」

こうやって掘り下げると、本当の課題が見えてくる。


第7章:美意識を「共有」するための言葉の選び方

デザイナーとしての感覚や経験から「こっちの方が絶対いい」って思う瞬間、あるよね。
でも、それを“言葉で伝える技術”がないと、ただの押し付けになってしまう。

だから僕は、感覚を「翻訳」するトレーニングをよくしてる。

たとえば:

  • ❌「こっちの方がかっこいいですよ」
  • ✅「こちらの方が視認性が高く、ユーザーの離脱を防ぎやすいです」
  • ❌「その色はちょっと古く見えますね」
  • ✅「この配色だと、今のトレンドや若年層の感覚から少しズレてしまう印象があります」

主観ではなく、目的とデータで語る。

クライアントは「あなたの美意識」に従いたいわけじゃない。
「結果に繋がる理由」があって初めて納得するんよ。


第8章:クライアントと“戦わずに勝つ”とは?

結局、この記事で言いたいことはここに集約される。

戦って勝つのではなく、「信頼で納得させる」。

そのためには、

  • 先に“相手の案”を通して失敗させる
  • 意図を引き出し、要望の裏側を読む
  • 自分の美意識を目的に変換して伝える
  • ユーザー視点とゴールに立ち返らせる

この4つを繰り返すことで、
クライアントはあなたの提案に自ら乗ってくるようになる。

「反対されたから通らなかった」のではなく、
「自分で選んで、納得して、頼ってくれた」という状態を作れたら、それは“勝ち”や。


第9章:まとめ ─ 「美意識の押し売り」にならないために

最後に、この記事の要点をまとめるね。

誤ったアプローチ正しいアプローチ
見た目の良さだけで推す目的と効果で説得する
主観的な感性で判断するユーザー視点で説明する
クライアントの言葉を鵜呑みにする背景の意図を引き出す
自分の“作品”を作るクライアントの成果物を作る

デザインは戦場じゃない。共創の場。

クライアントの「NO」は、あなたの価値を否定してるわけじゃない。
まだ納得できるだけの“言葉”が足りてないだけ。


🎯デザインに悩んだら、気軽に相談してみてください

「クライアントに押し切られてしまう…」
「なんか説明がうまくできない…」
「美意識が伝わらない…」

そんな悩み、あるあるですよね。
僕も昔はずっと悩んでました。でも、やり方と考え方をちょっと変えるだけで、
デザインはもっと楽に、もっと信頼される仕事になります。

もし今ちょっとでも引っかかってることがあれば、
ぜひ一度、下のフォームから相談してみてください。

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